そよかぜ


 先日、新聞をぱらぱらめくっていた時にふと目に入った言葉、~そよかぜ~。酷暑といわれるこの夏のさなかですが、言葉をかみしめて見ると一瞬の爽やかさを味わえるものです。

18時間培養後


 翌日の午前10時、18時間培養後の受精卵です。3卵とも発育がみられブラストになっていました。旺盛な発育で、これなら新鮮胚と同様な受胎成績が期待できるかもしれません。しかし、受胎に関してはレシピエント側のコンディションも重要な要素だと思います。栄養状態、子宮や卵巣の状態が正常であることは必須条件だと思います。受精卵移植で受胎率を高く維持するための飼養管理技術を確立していくことが当面の大きな目標です。

凍結受精卵の融解


 昨今の凍結受精卵は、ダイレクト法が主流となっているのではないでしょうか。融解作業が人工授精並みに簡便だというところが普及に一躍買っていることは確かだと思います、また、受胎率も従来のステップワイズ法とさほど変わらないという報告もあり、ダイレクト卵のニーズが高いのも納得です。私はダイレクト凍結をした受精卵を、移植前に融解し、胚の品質を確認し、さらにCo2インキュベーターで培養することによる受胎率の動向を観察しています。写真は凍結胚を融解し、耐凍剤からPBSに移した直後です。

早期流産


 これは胎齢38日で流産してしまった胎児です。たまたま牛房内で発見しました。
せっかく受胎しても妊娠が維持できず流産してしまうのはがっかりです。
なぜ流産してしまったのだろう?臨床現場で遭遇する早期流産では不明な点がまだまだ多くあります。
母体側の要因、胎児側の要因、細菌やウイルスの感染などが流産の要因として考えられますが更なる研究が望まれます。
逆に、受胎が成立することや胎児が成長して分娩を迎えるという生体の緻密なメカニズムは、驚くべき生命の神秘なのかもしれません。

公共牧野での受精卵移植






 青森県にはたくさんの公共の放牧場があります。緑の広大な牧草地でゆったりと草を食む風景は、のどかで心が癒されます。もちろん牛にとっても最良の生活環境でしょう。






 六ヶ所村にある酪農振興センターでは、今年7月から我々民間の技術者が、農家の依頼を受けて受精卵移植を行うことが可能となりました。これまでも生産者サイドから受精卵移植実施への強い要望はあったものの、さまざまな理由から実現に至らなかったという経緯を聞いていました。いずれにしても今回の移植解禁は生産者にとっては朗報です。市場価値の高い和牛受精卵を供給、受胎させていきたいと思います。



 身近な地域にありながら、ほとんど来る機会が無かった酪農振興センター。訪れてみるとなんとも風光明媚な放牧場です。