駆け引き その2

このところの子牛価格の高騰も事実関係しています。

交雑種(F1)の雄で27〜28万円、メスで22〜23万円がここのところの平均値です。ホルの雄も15〜16万円ですから・・・。

この母牛のお腹に入っているのは、我が社の種雄牛「花美津国」で、体格が良く出るため、平均価格よりも少しだけ高い相場で取引されています。ですから畜主も心の中では期待しているはずなんです。

この子牛が生きて生まれてくるか、死産になるのかは、農家の生活にとって大きな差があるのです。

それからもう一つ大事なことがあります。難産による母牛のダメージです。子宮捻転の場合、ほぼ全てのケースで胎児が産道に入っていないまま分娩が進行していきます。胎児を回転させて捻転を整復しても、それから産道に胎児が侵入し、怒責により押し出され、骨盤腔が徐々に緩み、自然分娩に近い形で娩出されることはまず稀です。それは、整復する際にどうしても破水してしまうため、足胞が破れないまま産道に侵入するのと比較して、骨盤の開きが悪いためです。もちろん、整復後にすぐに胎児を引っ張り出そうとしてはいけません。可能な限り産道が開くように怒責をさせ、待たなければなりません。

しかし、もともとカルシウム低下を伴っていたり、過肥などの代謝障害を持った母牛でこのような分娩異常となっている場合はどうでしょうか。また、ここまでにすでに体力を使い果たして、性も根も尽きた状態であればなおさら、少しお助産をして楽に分娩させてあげたいものです。分娩時のダメージを最小限にとどめ、産後の食い上がりをスムーズなものにできれば、その後の泌乳は自ずと順調なはずです。

母牛の状態と胎児の状態を見極め、待つべきか、それとも出すべきか・・・ある意味、これも駆け引きなのかも。

つづく。

駆け引き

   
  正直、この難産にこんなに手こずるとは思ってもみませんでた・・・。

 胎児の体制は、およそ90度傾いている程度で、用手にて整復できると簡単に考えていたのです。

 ところが、母体の怒責(子宮の収縮)が微弱で胎児が産道に押されてこないため、深い場所での胎児整復を余儀なくされました。

 胎児の後頭部にはとても産科ワイヤーは掛けられそうもありません。 止む無く下顎に紐を掛け、少しづつ産道に乗せようとしました。 

しかし、前肢も一緒に来てしまうため、上手く乗りません、前肢を折り曲げて後方に押しながら頭部を引き出す、そんな駆け引きを一時間もの間、繰り返しましたが、なんとか整復した後、下した決断は、「このまま引っ張ったら胎児が生きている保証はないだろう」ということでした。

牛舎の片隅で

めっきり秋らしくなってきました。 

 
先日、肥育農場の巡回を行っていた時の出来事です。餌場の隅に生まれたての子猫が3匹、牧草を敷物にして寒そうにうずくまっておりました。 

ミャーミャーと蚊の鳴くような声をだし、寝ているとも起きているとも区別がつかないうつろな眼をして体を寄せ合っているではありませんか。 

これからの季節、寒くて大変だろうな~と思いながらそ~ッと近寄ってみました・・・。 

すると、その中の一匹が眼光鋭く、真っ赤な口を大きく開け「しゃーっ」と威嚇してくるでわありませんか。

小さいけれど、白く鋭い牙がきらりと光った気がしました。 
幼いながらも、兄弟を守ろうとして「指一本ふれてみろ。ただではおかねー」はたまた、「おめえの情けなんぞうけてたまるかい」とでも言わんばかりの勢いです。

私は、「どうもすみませんでしたー」と、そそくさとその場をあとにしたのでした・・・。

胚移植研究会

高知大学で開催されました胚移植研究会に参加させていただきました。
1日目は、受精卵の凍結保存に関するシンポジウムが行われ、急速ガラス化保存法や緩慢凍結法の理論やその変遷が紹介されました。
また、研究会に先立ち開催されましたET実務者ネットワークでは、ガラス化保存受精卵のダイレクト移植の実習とYTガンを用いた移植の実習が行われました。
今回は特に、家畜改良センター十勝牧場の稲葉先生によるガラス化保存の講義と実習が興味深く、実用的で有意義でした。

夜の部はいつものごとくで、久しぶりに再会する皆様とよく飲み、よく食べ、熱く語り合った二日間でした。

高知は天気も良く、汗ばむ様な陽気で充実した出張となりました。
それにしも鰹の塩たたきと日本酒がまいうーでした。

種雄牛の削蹄



東北地方北部で梅雨入りが発表されました。

 昨日は、気温が12度前後と肌寒く、暴風を伴った冷たい雨が断続的に降り続いた一日でした。

 土曜日は基本的にOPUは行わないので午前中は自社農場のETが1頭と横浜町でのETが1頭、その後、契約肥育牧場の農場巡回を行い、午後は自社農場の削蹄を行いました。 





ビフォー
アフター

分娩前の親牛と、種雄牛2頭の削蹄。

種雄牛の扱いはやはり気を使いますね。
細心の注意を払って無事削蹄が終了しました。スッキリ整えられた蹄で気持ち良さげです。
 

4月市場

4月に入ってだいぶ春らしくなってきました。

子供のころ、冬の間ずっと長靴で過ごして来て、春の雪解けとともに親からズックの許可がおり、その軽さや解放感から、思わず訳も無く駆け出してしまったことを思い出します。

まだ冷たさが残る春の風は、若葉の芽吹きとともにこれからいっせいに押し寄せて来る命の躍動感を感じさせます。

4月10日に行われた青森県家畜市場で弊社種雄牛である「花美津国」を父に持つ産仔が高値で購買頂きました。

花美津国ー安福久ー平茂勝

279日337kg 去勢  77万2千円


ありがたい限りです。

最近は、ストローの問い合わせもちょくちょく頂く様になりました。

春の訪れとともに、我が社の牛達も躍動の波に乗りたいところです。

東日本ET研究会

2月5,6日の両日、秋田県秋田市において東日本受精卵移植研究会が開催され、出席してきました。 

当日は、穏やかな天候となり、積雪もほぼゼロでした。

 一日目のシンポジウムでは、「受精卵移植技術を活用した肉用牛の増産と牛群改良」というテーマで4題の講演があり、中でも千葉農済連の原先生の「F1雌牛飼育農場における黒毛和種増産の取り組み」が非常に興味深い内容でした。

交雑種200頭を母牛とする肥育一貫経営の農場において、受精卵移植の受胎率の低下への対策として2卵移植を実施したところ、受胎率の向上(60%)と生産頭数の増加(200頭の母体から300頭の子牛を生産)が見られたという内容です。

和牛子牛の生産基盤が減少する昨今、これを解決するヒントがたくさん詰まった取り組みだと思います。
しかし、受胎性を維持したり、周産期の事故を回避するための緻密な管理技術がその背景には当然、存在するということをフロアで伺い、なるほどと納得しました。

 二日目の一般発表では民間からOPU・IVF関連の発表が3題もあり、時代の趨勢を感じずにはいられませんでした。
渥美牛群管理サービスの長谷川先生は年間3千頭を超える移植を行う同施設で、体内胚だけでは移植する胚を確保できず、OPU・IVFに取り組んだ経緯を紹介。当初は20%台であったIVF胚の受胎率が、さまざまな改良を加えて一回当たりの発生卵数は低下するものの、作出される胚の品質が向上したことで、現在の受胎率は40%台にまで改善されていることを強調されていました。
 民間施設におけるOPU・IVF技術の進展が目覚ましい印象でした。
体内胚と同等の受胎率になるのももう時間の問題かもしれませんね。 
わたしもがんばらねば・・・。

札幌出張

講演を依頼され、札幌へ出かけてきました。

 北海道獣医師会主催、さっぽろ獣医師会共催の「管理獣医師セミナー」で、 弊社の業務内容の紹介や、個体診療や管理獣医療の実際、自社牧場で行ってきた試験研究の結果などをお話しさせていただきました。 
 どのような方々が参加されるのか、あまり情報が無く準備をしましたが、公務員やOBの方々が多く見えられていたようで、果たして私の話した内容は皆様の 期待にこたえるものだったかどうか、あまり自信がありません・・・。
 オーディエンスの反応を見て、機転の利いたジョークでも言えればいいのですが、何せ人前で話すのは慣れていないもので全く余裕がありません。 

しかし、講演後の懇親会では、多くの方にお声をかけていただき、ありがたかったですし、大変勉強になりました。
講演の準備をする中で、自分たちの診療所の姿を見つめなおす機会にもなりました。
会社として、これまで、いろいろな取り組みをしてはきたわけですが、一つ一つの技術レベルの到達度はまだまだ発展途上です。 
今後、実現してい日なければならないポイントを具体的に整理できたので、私自身「やる気満々スイッチオン」状態です。
良い経験をさせていただきました。 関係者の皆様、大変お世話になりました。