全農「乳牛の生産寿命・受胎率向上セミナー2014」


1月28日に岩手県滝沢市(ついこの間まで村でしたね)のアピオスで開催されました全農繁殖セミナー「乳牛の生産寿命・受胎率向上セミナー2014」に参加させていただきました。 

当日は、あいにくの雪模様の天気でしたが、会場には多くの関係者が詰めかけ、かなりの熱気となりました。 

第1部では、全農ETセンター所長の青柳敬人先生が、「生産現場における乳牛経産牛の受胎率向上について」と題して講演されました。 北海道はもとより、全国的に乳牛の繁殖成績が低下する傾向にあり、これは温暖化による夏場のヒートストレスや、それに起因する周産期疾病の増加、高泌乳化による性ホルモン代謝の亢進による発情兆候の微弱化などがその主な原因とあるとし、そういった状況の中でも高い受胎率を実現し、なおかつ、市場価値の高い和牛子牛を生産する方法として全農ETセンターが取り組み注目を集めている「新ETシステム」を紹介しました。
 この「新ETシステム」の最大の特徴は、全農が開発した受精卵を凍結せずに4Cで約1週間保存できる「チルド受精卵」にあり、全国各地の移植希望農場であらかじめ同期化されているレシピエントに対し、航空機で「チルド受精卵」を運搬、移植し、高い受胎率を実現しているところです。
また、受胎率を高めるための栄養学的アプローチとして移植予定牛は採血を実施し、BUN(血液尿素窒素)/GLU(血糖値)を測定するとのこと。これらの比であるB/G比が0.3以上の個体は受胎率が低値となる(細川ら)ことに着目。対策手段として糖蜜、リジンを主成分とする添加剤「とまるちゃん」を開発、B/G比が0.3以上の牛群に対し「とまるちゃん」を2週間投与することで閾値が低下し、ETの受胎率の向上を実現していることを説明されました。 

第2部は、アメリカCRI社の副社長補佐のボブ・ストラットン氏が、「北米における乳牛改良の現状と将来について」と題し講演されました(写真) 全農は、昨年よりCRI社の凍結精液の取り扱いを開始しており、その最大のコンセプトが「生産寿命を延ばす改良」であるそうです。同社が推奨する改良システムを取り入れた場合、生産寿命の延長はもとより、疾病リスクの低減などで収益性の高い酪農経営が将来的に可能になることをアピールしていました。体型や能力だけではなく「長持ちする」という改良に舵をとるべきということがよくわかりました。

 わずか2時間すこしのセミナーでしたが、内容盛りだくさんで大変勉強になりました。 特に「新ETシステム」は、まさにいい仕事をしているな〜の一言でした。私どもにもすぐに取り入れる事ができる事例が多くあるなと感じるとともに、とっても良い刺激もいただきました。ありがとうございました。